ベントレーはドイツ車?

古くからイギリスの超高級車として日本でもよく知られているベントレー、ロールスロイスとともにイギリスの高級車として扱われているわけですが、ベントレーという企業自体はイギリスの本拠地を置いているので、イギリス車といっていいのかもしれません。
しかし、ベントレーは業績の悪化によって、ドイツのフォルクスワーゲンに買い取られ、フォルクスワーゲングループの一員となっため、ドイツ車として扱うのが本当のところではないかと思います。

このフライングスパーシリーズに関しても2005年に発売された、まだコンチネンタルという言葉が付けられていた時代のモデルでは、フォルクスワーゲンの大型セダンモデルであるフェートンの兄弟車として作られ、ボディや内装以外のプラットフォームやエンジン、トランスミッションなどをフォルクスワーゲン・フェートンと全く同じドイツ製の部品を使って作られていました。
フライング・スパーとなった現在でもそのほとんどをドイツのフォルクスワーゲン製とし、エンジンもフォルクスワーゲン製のエンジンが搭載されている始末です。

ですので、ベントレーは企業の国籍としてはイギリスですが、車体はドイツの車といっていいでしょう。

フライング・スパーはスポーティーモデル

現代版フライング・スパーは、2ドアクーペスタイルを持つコンチネンタルGTというスポーティーモデルの4ドアバージョンとして作られました。
そのため当時は「フライング・スパー」ではなく、「コンチネンタル・フライングスパー」と呼ばれていました。

フライング・スパーと呼ばれるようになったのは2013年に発売されたモデルで、このモデルでは更にW型12気筒エンジンを搭載していることからフライング・スパーW12と呼ばれるようになりました。
W型エンジンというのはV型エンジンの派生型で、V型エンジンでは片バンクに一列のシリンダーがあるのに対して、W型は二列のシリンダーが並んでおり、W型12気筒エンジンでは片側のバンクに3つのシリンダーが二列で並んでおり、そのシリンダーブロックがV型につけられている形となります。

多気筒化するのにエンジンの大型化を避けるための一つの手段として使われています。
このエンジンを搭載するフライング・スパーには更なるハイパフォーマンスモデルが作られています。
それが、フライング・スパー W12 Sというモデルです。

このモデルは、スポーティーなフライング・スパーをさらにスポーティーにしたもので、究極のフライング・スパーといっていでしょう。
エンジンは、6リッターW型12気筒DOHCに片バンクに1つずつターボチャージャーを付けたツインターボとなっており、パワーは635psを発生させています。
トランスミッションは実績のある8速オートマチックトランスミッションで、駆動方式はフルタイム4WDとなります。

確かにこの大パワーを確実に路面に伝えるには4WDは必須でしょう。
サスペンションはフライング・スパー共通のフロントがダブルウィッシュボーン、リヤがマルチリンクの四輪独立懸架で、ブレーキも四輪ベンチレーテッドディスクとなりますが、フライング・スパー W12 Sにはカーボンセラミック製のディスクローターが採用され、更に熱に強くなっています。

無理やり感が否めない

ベントレーというと誰もが超高級車で、金持ちしか買えない車というイメージがあるでしょう。
車自体も至れり尽くせりの装備でシートも本革、インテリアパネルも本木目といった高級素材を使って作られているラグジュアリーな車というような感じを持つのではないかと思います。

しかし、このフライング・スパーは、スポーティーモデルとして作られており、そしてW12 Sは更に上を行くスポーティーモデルとして作られているわけで、その辺に少し違和感を持つことになります。
ラグジュアリーとスポーティーというのはある意味で正反対のものであるため、そもそもラグジュアリー―のイメージを持つ車をスポーティーに仕上げるというのも無理があると思います。
特にベントレーらしさを醸し出しているボディデザインはスポーティー差をまったく感じることができないのでなおさらです。

何かかなり無理をしてスポーティーモデルを作っているとしか見えないのです。
まるでトヨタのG’sシリーズのようです。
大衆車やハイブリッドカー、ラグジュアリーセダンにエアロパーツを付けて、サスペンションを少し固めにしただけでスポーティーモデルとして販売してしまうといった感がこのフライング・スパー W12 Sにも多大にあるように思えるのです。
ベントレーはベントレーらしい車を作った方がいいように思うのは自分だけでしょうか。