回転数でバルブ数が切り替わるREV機構の魅力
1980年代の空前のバイクブームの中で、日本の二輪車メーカーであるホンダが世に送り出したCBR400Fは、当時の最先端技術の粋を集めた非常にユニークで複雑なメカニズムを搭載していました。
それがエンジンの回転数に応じてバルブの作動数が自動的に変化する、REVと呼ばれるホンダ独自の画期的な可変バルブ機構です。
アクセルを開け始めた低い回転域では2つのバルブのみを動かすことで、街乗りでも扱いやすい豊かな低速トルクを発生させ、一定の高回転数に達するとエンジン内の油圧を利用して4つのバルブすべてが作動。
レーシングマシンのような爆発的な加速力を生み出すという夢のようなシステムです。
この2バルブから4バルブへと切り替わる瞬間に、マフラーから聞こえるエンジン音が突然甲高くドラマチックに変化し、同時に強烈な加速が始まる独特のフィーリングは、当時の多くの若いライダーを完全に虜にしました。
この劇的なパワーの立ち上がりと官能的なメカニカルサウンドこそが、CBR400Fが現在でも語り継がれる伝説のプレミアムバイクとなっている最大の理由といえます。
レーサーレプリカ全盛期に登場したネイキッドスタイル
CBR400Fが市場に登場した1983年末という時代背景は、空気抵抗を減らすための風防であるカウルをまとった、サーキットのレーシングマシンそっくりのレーサーレプリカモデルが次々と登場し、かつてない熱狂的なブームの幕開けを迎えていた時期でした。
その新たなトレンドが急加速していく中で、ホンダはあえて空力を意識したカウルを持たない伝統的なネイキッドスタイルに、四角いデザインのヘッドライトとエッジの効いた角ばった燃料タンクを組み合わせた、非常に斬新で挑戦的なデザインで勝負に出たのです。
エンジンには冷却フィンが美しい空冷の直列4気筒を採用し、フレームの下部にはメカニカルなオイルクーラーをあえて目立つように配置するなど、バイクが本来持っている鉄と機械の造形美を前面に押し出したスタイルは、レプリカブームに少し疲れていた若者たちの支持を瞬く間に集めました。
最新の複雑なエンジン技術をあますところなく詰め込みながらも、バイク本来の無骨なかっこよさとストリートに映えるスタイルを残したこのデザインは、1990年代に到来するネイキッドブームの明確な先駆けとも言える圧倒的な存在感を放っていました。
現在の旧車市場における希少価値と人気の高騰
新車としての発売からすでに数十年という長い年月が経過した現在、CBR400Fは日本の旧車バイク市場においてトップクラスの非常に高い人気を誇っており、その取引価格の異常なまでの高騰が続いています。
当時の若者たちが憧れたあのREV機構が切り替わる際の独特なエキゾーストサウンドをもう一度味わいたいと求めて、全国の専門店を巡って状態の良い車両を探し求める熱狂的な愛好家が後を絶ちません。
しかし、REV機構という非常に精密で複雑なエンジン構造を採用しているゆえに、素人によるメンテナンスが極めて難しく、メーカーからの純正部品の供給もほとんど終了してしまっているため、当時のまま完璧に動作する美しい車両は極めて希少な存在となっています。
専門の職人の手によってフレームの塗装からエンジンのオーバーホールまで完璧にレストアされた極上の車両は、現在の最新型の大型スーパーバイクの新車価格を大きく上回る数百万円というプレミアム価格で取引されることも決して珍しくありません。
空冷4気筒エンジンの芸術的な造形美と、走る楽しさを純粋に追求したホンダの情熱的なメカニズムは、現代の電子制御された最新バイクにはない強烈な個性として、これからも多くの旧車ファンを魅了し続けることでしょう。



