フランス製のスーパースポーツ?

フランスの車というのは、シトロエンに代表されるように、比較的小さく、足周りが柔らかい車が多いのが特徴です。
フランスは市街地に行くと日本のように路地が入り組んでいて、更に石畳の道路が多いので、乗り回しやすい小さなボディと石畳のでこぼこで乗り心地が悪くならないようということで柔らかい足回りが与えられることが多いのです。
現在では舗装が進み、幹線道路のほとんどはアスファルトで舗装されてきており、硬い足周りでも乗り心地を失わないようになりましたが、古き伝統を守るということで、今でも新しく作られるフランス車は足回りがソフトなものが多いようです。

そのフランス生まれの車の1台となるのがプジョーです。
プジョーは同じくフランスの自動車メーカーであるシトロエンとPSAプジョーシトロエンというグループ企業を構成している中のグループ企業として存在しており、両社の車ではプラットフォームや部品などを共用した車を作っています。

どちらも大衆車を多く作っており、日本でもプジョー208や2008、シトロエンC3やC4といったものが有名です。
これらの車はどれも大衆モデルであって、フランス車らしく、小さくソフトなサスペンションを持ち、エンジンパワーもそれほどたかくないFFモデルといった形で作られているのです。

そういった車を作るプジョーが、他のヨーロッパの自動車メーカーのごとく、スーパースポーツモデルを企画し、そのコンセプトモデルを作成しました。
それがプジョーの907です。

フランス車の伝統とは正反対

フランスの車というと先ほども言いました通り、非力なエンジンと小さなボディ、柔らかいサスペンションを持つ車が多いものですが、いわゆるスーパースポーツモデルというものは、暴力的なパワーを持つ大排気量エンジンにその大きなエンジンと先進技術を搭載するために大きくされたボディ、ガチガチに固められたサスペンションというのがお決まりです。

要するにフランスの自動車メーカーが今まで作ってきた車の形態とスーパースポーツモデルというのは全く正反対の位置にいるものであるということがわかります。
そのプジョーがスーパースポーツモデルを作ったということで注目を集めたわけです。

プジョーでは現在RCZというスポーツモデルを生産しています。
これは308という大衆モデルのプラットフォームを流用して作られているもので、そこに最大200psの1.6リッターターボエンジンとヨーロッパ車らしい2リッターのディーゼルターボエンジンを搭載させた形で作られています。

デザイン的にはスポーツモデルらしいきれいなラインが取り入れられており、魅力的に見えるのですが、何せ200psの1.6リッターターボエンジンではスポーツ走行を楽しむことは容易ではありません。
駆動方式もFFですし、サスペンションなどFFレイアウトモデルならではストラットとトーションビームの組み合わせといったもので、もはや軽自動車と変わらないものしか与えられていないのです。
これでスポーツモデルとは聞いてあきれます。

そういった車作りをするプジョーがスーパースポーツモデルを作ったということですので、あまり期待されていませんでした。

どうしたプジョー

907が発表されたのは2004年のパリのモーターショーでした。
新しいプラットフォームにプジョーでは最大となる6リッターV型12気筒エンジンをフロントミッドシップにおさめ、トランスアクスルで設置された6速ミッションで後輪にパワーを伝えるというFRレイアウトを持ちます。
サスペンションは四輪ダブルウィッシュボーンの独立懸架で、ロングノーズ・ショートデッキスタイルの2シーターハッチバッククーペのボディがかぶせられています。

これらものは今までのプジョーのモデルにはなかったもので、かなり思い切ったことをしたようですが、このモデルは結局はコンセプトモデルだけとなってしまい、その後市販どころか、開発もされていないようです。
プランスの隠れたスーパースポーツモデルといっていいでしょう。